趣旨
IT技術の進歩により、インターネットを利用することはもはや日常の一部となりました。多くの人々が、調べもののためにGoogleやWikipediaを使って情報を集め、必要なときにwebページをコピー&ペーストし、話題の音楽や映像はYoutubeで視聴する、ということを気軽に行います。完全な複製が可能となり、単純な操作を通じてリミックス音楽などの二次創作を作れるようにもなりました。しかし、こうしたネット上の日常的行為の数々に、著作権法によって罰せられるべき行為が多数含まれていることを、意識している人がどれほどいるでしょうか。多くの常識人たちが、インターネット上で、日々知らないうちに違法行為を繰り返しています。他方、インターネットプロバイダーやコンピューターメーカーなどの業界では、IT技術を利用したインターネットビジネスの大きな可能性が未だ完全には開かれません。その一つの原因とされるのが、実質的には誰の利益も犯していないのに、条文解釈上ルール違反として罪を問われるリスクである著作権法の形式的侵害です。企業は自らが「違反者」となることを恐れるあまり、それが大きなチャンスであったとしても、専門家にしか白黒を判断できないような新規ビジネスを避けてしまいます。
これらの問題が生じる根底には、IT技術の進歩により著作権法の守備範囲が著しく拡大し、人々の生活に深く関わるようになったという社会の変化と、それとは対照的に、既存の法律自体に手が加えられてきていないために、従来の硬直的な制度運用では急激な技術革新への対応が難しいという現実があるのではないでしょうか。
こうした中、現実に相応した法をつくるために、文化審議会において取りまとめが進められているのが、「日本版フェアユース規定」です。同案は、著作権の権利制限形態について、これまでの限定列挙規定から一般条項による包括的制限規定へと転換することで、著作権制度の柔軟な運用を可能とすることを狙いとしています。審議会では様々な利害関係者からの賛否両論が飛び交い、著作権法が与える経済的・社会的影響の大きさを改めて感じさせることとなりました。
私たちの講演会では、日本の知的財産法分野に精通し、権威である先生方をお呼びして、一般ユーザー、ビジネス、司法という立場から、できるだけ多角的に、「日本版フェアユース規定」の是非、ひいては「高度情報社会における著作権法のあるべき姿/未来像」について熱論を繰り広げていただこうと考えております。その際、日頃法律に親しんでいない方、あるいはまだ勉強途上である学生にとってもわかりやすいものとなるように、映像を放映したり、具体的な事例を取り上げます。来場者の方々に、今まさに社会の枠組みが大きく変化しようとしているダイナミズムを肌で感じてもらい、これからの方向性をともに考え、新鮮な驚きを共有できたら、私たちにとってこれ以上の喜びはありません。
